AI検索時代、「見られる競争」から「語られる競争」へ
バリューコマース、MarkeZine Day2026 Autumn 登壇レポート
バリューコマース株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 最高経営責任者:香川 仁)は、2026年9月8日、JPタワーホール&カンファレンスで開催された「MarkeZine Day 2026 Autumn」において、当社執行役員 Chief Marketing & Strategy Officerの天野 武が「AI検索時代、『見られる競争』から『語られる競争』へ ─ Narrative Marketingという新しい競争戦略」をテーマに講演しました。
MarkeZine Dayは、マーケティング領域の最新動向や先端事例が共有される大規模カンファレンスです。本講演では「AI検索がマーケティングにもたらす構造変化」をテーマにお話ししました。


「見られること」を最適化してきたデジタルマーケティング
インターネットやSNSの普及によって、私たちが日々接する情報量は大きく増えました。SNSやショート動画、ゲームなど、多様なサービスが生活者の限られた可処分時間を奪い合っています。
さらに、テレビを見ながらスマートフォンを操作するような「ながら視聴」も一般化し、接触時間を確保したからといって、必ずしもユーザーの「注意(アテンション)」まで獲得できるとは限りません。
つまり、奪い合う対象は「可処分時間」だけでなく、限られた「可処分アテンション」へと広がっています。こうした状況を「アテンションエコノミー」と呼びます。
アテンションをめぐる競争が激しくなるなか、広告が視界に入っていても注意を向けられない「アドブラインドネス」など、広告でユーザーの注意を獲得することは難しくなっています。
一方、デジタル広告では、限られた広告機会を入札によって競い合うオークション型の仕組みが広く採用されています。アテンションの希少性が高まるなかで広告枠をめぐる競争は広告コストへの上昇圧力となり、CPA(顧客獲得単価)にも影響します。
つまり、広告はユーザーの注意を獲得しにくくなる一方で、そのために必要なコストは高くなるという構造にあります。
こうした環境のなかで、マーケティングでは「何を伝えるか」の前に、「まず見られること」が重要な課題になりました。
そして広告もSEOも、この「見られること」を最適化する方向へと高度化していきます。
広告もSEOも「見られること」を最適化してきた
「見られること」が重要な課題になるなか、広告もSEOも、その課題を解決するために高度化してきました。
広告では、RTB(リアルタイム入札)の普及によって、広告枠をインプレッション単位でリアルタイムに売買できるようになりました。しかし、その競争原理は突き詰めれば、「そのインプレッションをいくらで買うか」という価格の一点勝負です。
また、データ活用が高度化することで、ユーザーを深く理解しなくても、行動データから「誰が反応する確率が高いか」を予測し、広告配信を最適化できるようになりました。
SEOでも同様に、検索需要をもとにコンテンツを設計し、検索結果の上位を獲得するためのさまざまな手法が発達しました。
こうした技術はデジタルマーケティングを大きく発展させてきました。その一方で、「見られること」への最適化が行き過ぎると、ユーザーを理解し、価値ある体験を届けることよりも、「いかに見られるか」「いかにクリックされるか」そのものが目的化する側面も生まれました。
コンテンツに覆いかぶさって注意を惹くオーバーレイ広告や、意図しない行動を誘発するダークパターンなどは、その象徴的な例です。
広告もSEOも、本来はユーザーに価値ある情報を届けるための仕組みです。しかし、その最適化が行き過ぎることで、広告は「アテンションとクリックを刈り取る装置」に、SEOは「上位表示を獲得するためのテクニック」に傾いていきました。
結果として、デジタルマーケティングは、ユーザーそのものではなく、「見られること」を最適化する競争へと向かっていったのです。
AI検索は「検索革命」ではなく「認知革命」
では、生成AIの登場によって、この「見られる競争」はどう変わるのでしょうか。
現在、多くの企業でAI検索への取り組みが始まっています。しかし、AI検索を「AI検索時代のSEO」として捉えるだけでは、その本質的な変化や可能性を十分に捉えられないと私たちは考えています。
そもそも、便宜的に「AI検索」と呼んでいますが、生成AIで起きていることは、もはや従来の意味での「検索」だけではありません。

従来の検索エンジンは、いわば「答えを探す技術」でした。
ユーザーがキーワードを入力すると、検索エンジンが関連するWebページを提示する。そこからユーザー自身が情報を読み、比較し、最終的に判断する。検索エンジンが効率化していたのは、主に「情報を探す」というタスクです。
一方、生成AIは「解釈を生成する技術」です。
AI自身が複数の情報源から集め、要約し、比較・解釈したうえで、ユーザーの状況や文脈に応じた回答を生成します。これまで人が担っていた「読む」「比較する」「解釈する」といった認知活動の一部まで、AIが支援するようになったのです。
ここまでくると、すでに「検索」(文書やデータの中から必要な情報を探し出す)という言葉の範囲を超えています。
「人が情報を探し、自ら解釈する」世界から、「AIが情報を集め、解釈したうえで人の意思決定を支援する」世界へと変わり始めています。
生成AIは「需要を捉える」から「需要を生み出す」へ
生成AIは、すでに存在する需要を捉えるだけでなく、その手前にある需要形成のプロセスにも関わり始めています。
これまで広告は、主に「すでに存在する需要」を獲得するために進化してきました。検索広告は、ユーザーが検索や情報収集を行うZero Moment of Truth(ZMOT)*¹の段階で顕在化した購買意図を捉え、リターゲティング広告は興味を持ったユーザーの意思決定を後押しします。
一方、生成AIとの対話は、そのさらに手前から始まることがあります。
ユーザーは必ずしも「何を検索したいか」「何を買いたいか」が明確な状態でAIに話しかけるわけではありません。「最近こんなことで困っている」「こういうことをしたい」と相談し、対話を重ねるなかで、新たな選択肢に気づき、自分自身の課題や欲しいものが形づくられていきます。

Similarwebの調査*2では、購買意図を持たずにAIとの対話を開始したユーザーの46%が、対話中までに購買シグナルを示したと報告されています。
つまり生成AIは、単にユーザーの問いに「答えを返す」だけではなく、対話を通じて「欲しい」という気持ちや購買意図が形づくられる場にもなり始めています。
従来の検索が、生活者が能動的に情報を探し始めるZMOTを中心としていたのに対し、生成AIはまだ検索する対象さえ明確になっていない、そのさらに前の段階から認知や需要形成に関与します。
この点から見ても、生成AIとの対話は、すでに従来の「検索」という枠組みを超えています。
ここでは便宜上「AI検索」と呼びますが、そこで起きているのは検索インターフェースの高度化ではなく、情報探索から解釈、需要形成、意思決定支援までを含む認知プロセスの変化です。
その意味で私たちは、AI検索を単なる「検索革命」ではなく、「認知革命」と捉えています。
*¹ Zero Moment of Truth(ZMOT):Googleが提唱した概念。消費者が商品を購入する前に、検索やクチコミ、レビューなどを通じて情報収集・比較検討を行い、購買意思を形成する段階を指します。
*² Similarweb「Advertising in AI: Insights from Real User Behavior」(2026年5月発行)
https://www.similarweb.com/corp/reports/advertising-in-ai/
ブランドは「企業が伝えるもの」から「社会が理解するもの」へ
AIが情報を集め、比較・解釈し、生活者の意思決定を支援するようになると、ブランドが理解される仕組みも変わります。
これまで企業は、公式サイトを整備し、検索結果の上位を獲得し、自社の商品やサービスについて正しい情報を届けることを重視してきました。企業が発信する情報が、ブランド理解の重要な起点だったからです。
一方、生成AIがブランドを理解する際に参照するのは、企業の公式情報だけではありません。比較記事やレビュー、SNS、口コミ、動画、専門メディアなど、第三者によって発信されたさまざまな情報も収集し、比較・解釈します。
つまり、ブランド理解の中心は、「企業が発信する情報」から「ブランドを取り巻く情報環境全体」へと広がっています。
ただし、ここでマーケティングの本質まで変わるわけではありません。
SEOも本来、ユーザーが求める情報を見つけやすくするためのものであり、検索エンジンもユーザーにとって有用な情報を評価する方向で進化してきました。マーケティングの起点がユーザーであることは、AI時代になっても変わりません。
問題は、最適化が高度になるなかで、いつしか「ユーザーにとって何が有用か」を考えることより、「アルゴリズムにどう評価されるか」を攻略することが目的化する場面が増えたことです。
AI検索でも、同じことを繰り返してはいけません。「AIにどう評価されるか」「AIにどう引用されるか」という攻略論だけに向かえば、再びユーザーを置き去りにしてしまいます。
変わらないのは、ユーザー理解を起点に考えるという原則。変わるのは、ブランドが理解され、形成されるメカニズムです。
では、そのブランドの意味を形成するのは誰なのか。
生活者は「読者」から「編集者」へ
従来のブランドコミュニケーションでは、企業がブランドの意味を定義し、完成したブランドイメージを生活者へ伝えるという発想が中心でした。
物語にたとえるなら、企業が「作者」であり、正しい解釈は「作者が何を伝えようとしたのか」にある。生活者は、その意味を受け取る「読者」という関係です。
しかし、現在の情報環境では、この関係だけではブランドを捉えられません。
生活者は、自らの体験や置かれた状況を通じてブランドを解釈し、ときには企業が想定していなかった意味を見いだします。そして、その体験をレビューやSNS、動画などを通じて語り、他者と共有します。
つまり生活者は、企業がつくった物語をそのまま受け取る「読者」ではなく、ブランドの意味を解釈し、再構成する「編集者」になっています。
そこには、企業だけが決められる「唯一の正しい解釈」はありません。一人ひとりの生活者が、それぞれの文脈のなかでブランドを意味づけ、無数の小さな物語として社会に残していきます。
そして生成AIは、こうして社会に蓄積された第三者の語りも収集し、比較・解釈しながらブランドを理解します。
生活者がそれぞれの文脈でブランドを解釈する以上、企業がブランドの意味をひとつに決め、完全にコントロールすることはできません。
一方で、企業にできることがなくなるわけではありません。生活者がブランドを理解し、自らの体験として語りやすくなる環境を整え、その形成を支援することはできます。
つまり、企業がブランドの意味を一方的にコントロールするものではなく、生活者による多様な解釈や語りが生まれる環境を整え、ブランド理解の形成を支援していくことが重要になります。
ブランドは、生活者に「語られる」ことで形成される
ブランドの意味は、企業が商品を市場に送り出した時点で完成するわけではありません。生活者が実際に商品を使い、自らの生活のなかで意味を見いだし、その体験を他者に語ることで、新たな意味が加わっていきます。
例えば、ある酸素系漂白剤では、企業が当初想定していた用途を超えて、生活者からさまざまな使い方が生まれました。
「子どもが洗うのを忘れて、絵の具がこびりついてしまったパレットをきれいにしたい」
「子どもが毎日抱いて寝ているぬいぐるみ。汚れやにおいは気になるけれど、お気に入りなので傷めずにきれいにしたい」
こうした具体的な生活課題のなかで、企業の商品説明だけでは想定しきれない新しい使い方が発見され、共有されていきました。
さらに、成功体験だけではありません。「この素材に使ったらうまくいかなかった」といった失敗例も共有されることで、成功も失敗も含めたリアルな利用文脈が蓄積されていきます。
もうひとつが、P&Gの「ファブリーズ」の例です。
『「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書』(東洋経済新報社)では、P&Gの「ファブリーズ」について、「消臭」という機能だけでは当初十分なニーズを見いだせなかったと紹介されています。
しかし同書によると、ヘビーユーザーの利用実態を調査したところ、生活者が掃除の最後にファブリーズを使い、「掃除を終えた」という気分を得るためのルーティン、いわば「仕上げの儀式」として利用していることがわかったといいます。
酸素系漂白剤の例では、生活者が「何に使える商品なのか」を拡張しました。ファブリーズの例では、「何のために使う商品なのか」を意味づけ直しました。
共通しているのは、商品の意味が、企業の定義した機能だけでは決まらないということです。同じ機能でも、生活者の体験や置かれた文脈によって、その意味は変わります。
生活者がそうした私的な体験を語ることで、その体験は他の人も参照できる情報となり、新しい利用シーンや意味が社会に共有されていきます。
企業が完成したブランドイメージを届けるだけではなく、生活者による無数の語りの積み重ねによって、ブランドの意味が形成されていく。
これが、「生活者は読者ではなく編集者である」ということの具体的な姿です。
見られる競争から語られる競争へ
こうしてブランドの意味が、企業からの発信だけではなく、生活者や第三者による多様な解釈や語りによって形成されるようになると、マーケティングの競争ルールも変わります。
これまでのデジタルマーケティングが、検索順位やアテンションをめぐる「見られる競争」だったとすれば、これから重要になるのは、誰に、どのような文脈で、どう語られ、どう理解されるかをめぐる「語られる競争」です。
例えば、2歳の子どもの初めての誕生日ケーキを探している場合を考えてみます。
従来の検索では、「2歳 誕生日ケーキ おすすめ」といった比較的短いキーワードから検索意図を推定します。そのため、「甘さ控えめ」といった、多くの人に共通する「最大公約数」的な情報が提示されやすくなります。
しかし、同じ「2歳の誕生日ケーキ」を探していても、生活者が置かれた状況はさまざまです。
「お腹が弱い子なので、できるだけ脂質の少ないケーキを選びたい」
「小麦を控えているので、グルテンフリーでも誕生日らしいケーキを探したい」
「初めて迎える誕生日だから、子どもが喜ぶ華やかなケーキにしたい」
AIは、こうした一人ひとりの文脈を読み取り、それぞれの状況に応じた「個別解」を生成します。
すると、ブランド側に必要な情報も変わります。
企業が発信するひとつの大きな物語、いわば「ドミナントストーリー」だけでは、多様な個別解のすべてをカバーすることはできません。
必要になるのは、異なる生活者がそれぞれの体験や文脈からブランドを意味づけた、無数の小さな物語(オルタナティブストーリー群)です。

「お腹が弱い子でも食べやすかった」「小麦を控えていても誕生日らしいケーキを選べた」こうした具体的な体験が社会に蓄積されることで、AIがユーザーの文脈に応じて商品やブランドを比較・解釈する際の情報源にもなり得ます。
情報の選ばれ方も変わります。
検索では、ひとつの検索結果のなかで上位を競う「ランキング」が大きな意味を持っていました。一方、AI検索では、すべての人にとっての「1位」が存在するとは限りません。置かれた状況が違えば、最適な商品も、それを選ぶ理由も変わるからです。
重要になるのは、単一のランキングで上位になることだけではなく、「どのような文脈で、誰に推薦されるブランドになるか」です。
企業に求められることも、「いかに見られるか」を最適化することだけではありません。生活者にどのように語られ、その結果としてブランドがどのように理解されるのかまで考える必要があります。
マーケティングは、「見られる競争」から「語られる競争」へと変わり始めているのです。
「オーディエンス拡張」から「ナラティブ拡張」へ
「語られる競争」では、マーケティングにおいて「何を拡張するのか」という考え方も変わります。
これまでのデータマーケティングでは、商品を購入した人や関心を示した人の属性・行動データをもとに、それと似た特徴を持つ人へアプローチを広げる「Look-a-Like」という手法が活用されてきました。
「この商品を買った人と似ているのは誰か」をデータから推定し、広告を届ける対象を広げる。つまり、「どの人に届けるか」を拡張する発想です。
その背景にあるのは「相関と確率」です。なぜその人が商品を必要としているのかを深く理解しなくても、データから「このような特徴を持つ人は反応する確率が高い」と推定することで、効率的にリーチを広げることができます。
一方、「語られる競争」で拡張したいのは、届ける相手だけではありません。
生活者によって生まれた体験や評価、利用シーンを蓄積し、「どのような人に、どのような文脈で、このブランドが意味を持つのか」という語りそのものを増やしていく。
私たちは、この考え方をLook-a-Likeになぞらえて、「Talk-a-Like」と表現しています。
つまり、「誰に届けるか」を広げるオーディエンス拡張から、「どのように語られるか」を広げるナラティブ拡張へ。
オーディエンス拡張が「相関と確率」の発想だとすれば、ナラティブ拡張が重視するのは、「文脈と共鳴」です。
リーチする人の数だけではなく、生活者にとって意味のある文脈や物語を増やしていく。これが「ナラティブ拡張」の考え方です。
「Narrative Marketing」という設計思想
「誰に届けるか」だけではなく、「どのように語られるか」を考える。
企業が定義したひとつのブランドストーリーを広く届けるだけではなく、生活者一人ひとりの体験や文脈から生まれる、多様な物語を育てていく。
ここまで紹介してきた考え方を、私たちは「Narrative Marketing(ナラティブマーケティング)」と呼んでいます。
Narrative Marketingとは、ブランドが「どのように理解され、どのように語られるか」を設計・マネジメントする設計思想です。
ただし、これは企業が生活者の語りをコントロールするという意味ではありません。ユーザー理解を起点に、生活者がブランドを理解し、自らの体験として語りやすい環境を整えることでブランド理解の形成を支援していくという考え方です。
その意味でNarrative Marketingは、新しいテクニックというより、AIがブランド理解に介在する時代に、ユーザー理解というマーケティングの原点を捉え直すための設計思想だと考えています。
AI検索時代に再評価されるアフィリエイト広告
では、「第三者による語り」という視点で、これまでのマーケティングを捉え直すとどうなるでしょうか。
ここで改めて注目したいのが、アフィリエイト広告です。
SEO時代に最適化されたアフィリエイトのなかには、検索流入の獲得を目的とした量産型コンテンツも存在しました。検索順位を上げ、トラフィックを集め、コンバージョンにつなげる。こうしたモデルは、検索環境の変化とともに従来ほど成立しにくくなっています。
しかし、アフィリエイトの価値は、検索流入を集めて送客することだけではありません。
一般的な広告は、メディアのコンテンツとは別に設けられた「広告枠」を通じて、企業が自らメッセージを届けます。いわば、コンテンツの外側で企業が伝える仕組みです。
一方、アフィリエイトでは、メディアやアフィリエイターなどの第三者がコンテンツのなかで、自らの視点から商品やサービスを比較し、解釈し、推奨します。
そう考えると、アフィリエイトは単なる成果報酬型の広告チャネルではなく、第三者の視点からブランドが「語られる仕組み」として捉え直すことができるのではないでしょうか。
この特徴は、AI検索時代に新たな意味を持ちます。
これまで述べてきたように、AIは企業の公式情報だけでなく、比較記事やレビュー、専門メディアなどの第三者情報も参照しながらブランドや商品の違いを理解します。
つまり、アフィリエイトによって生み出されてきた第三者コンテンツは、AIがブランドを理解するための情報資産にもなり得るということです。
しかも、AI検索への対応だからといって、すべてをゼロからつくる必要はありません。多くの企業は、アフィリエイトネットワークという形で、多様な第三者の語りを生み出す仕組みをすでに持っています。
成果報酬型の広告チャネルから、「AI検索時代の情報資産」へ。
既存のアフィリエイトネットワークを、AI検索時代のブランド理解を形成するための資産として捉え直し、活用していく。アフィリエイトには、こうした新しい役割があると考えています。
AI検索時代、メディアに新しい価値が生まれる
そして、この考え方はアフィリエイトだけに限りません。「第三者による語り」という視点をメディア全体に広げると、AI検索時代におけるメディアの新しい価値が見えてきます。
これまで多くのメディアは、検索エンジンなどからユーザーを集め、広告表示や送客、コンバージョンによって収益を得てきました。つまり、「トラフィックを集めて収益化すること」がメディアビジネスの重要なモデルのひとつでした。
しかし、AIが情報を収集し、比較・解釈してその場で回答するようになると、ユーザーがWebサイトを訪れることなく情報探索を終える場面も増えていきます。検索流入への依存度が高いメディアほど、従来のトラフィックを前提とした事業モデルの再設計が必要になります。
一方、前述したように、第三者が生み出すコンテンツそのものがブランド理解につながる情報資産になるのであれば、その情報資産を継続的に生み出してきたメディアにも、新しい価値が生まれます。
メディアの価値は、ユーザーを集めて送客することだけではありません。比較や体験、評価、解釈を通じて、「誰に、なぜこの商品が合うのか」という情報を社会に残し、ブランド理解を形成することにも広がっていきます。
AIとトラフィックを奪い合うメディアから、AIがブランドを理解するための情報をつくるメディアへ。
これまでの「送客価値」に加えて、「ブランド理解を形成する価値」をどうメディアビジネスとして成立させるか。
AI検索時代には、メディアの役割だけでなく、その価値をどうマネタイズするかという事業モデルそのものを捉え直す必要があると考えています。
Narrative Marketingを実践する
では、Narrative Marketingの考え方を、AI検索への対応にどう生かすのでしょうか。
講演では、当社が実際に支援したPCメーカーへの提案事例をもとにNarrative Marketingの実践方法を紹介しました。
このメーカーが抱えていた課題は、「価格が高くても買いたい理由をどうつくるか」というものです。PCは価格やスペックで比較されやすく、その競争だけに持ち込まれると、ブランド独自の価値をつくることが難しくなります。
このとき起点となるのは、「AIへの露出をどう増やすか」というSEO的な発想ではなく、「ブランドがどのような文脈で、どのような価値を持つものとして理解されるべきか」を考えることです。
そこで、検索キーワードや露出量ではなく、3つのブランド理解のGap(差異)に着目します。
公式が伝えたい価値:ブランドとして、どのようなシーンで、どのような強みを伝えたいのか
AIが理解・推薦している価値:AIは現在、そのブランドをどのような価値を持つ存在として理解し、どのような文脈で推薦しているのか
第三者が語っている価値:レビューや比較記事などでは、どのような利用シーンや評価軸、購買理由が語られているのか
Narrative Marketingの観点から行うGEO分析では、この3つがどこで重なり、どこにGapがあるのかを見ていきます。
ただし、その目的は、AIや第三者の語りを企業が伝えたい価値に合わせて「正しく修正する」ことではありません。
むしろ重要なのは、その差異そのものです。
企業が想定していなかった価値が第三者から語られているかもしれません。AIが、企業自身も気づいていなかった利用文脈や競合とブランドを結びつけている可能性もあります。
反対に、企業が重要だと考えている価値が、情報環境には十分に存在していないこともあります。
3つを企業の論理に合わせてひとつの正解へ揃えるのではなく、そのGapから新しいブランドの意味や、勝つべきナラティブを探索する。ここに、検索順位やAI露出を起点とするSEO型のアプローチとの違いがあります。
GEOをSEOの延長線上で考えない
Narrative Marketingでは、AI検索への対応をSEOの延長線上では考えません。その違いは、大きく4つあります。
第一に、キーワードではなく、経営課題から逆算すること。
「AIに表示されているか」から始めるのではなく、「価格が高くても買いたい理由をどうつくるか」といった事業課題を起点に、ブランドが獲得すべき理解を考えます。
第二に、検索需要から戦略を決めるのではなく、戦略から検索需要を確認すること。
まず「どのような文脈でブランドが勝つべきか」を定め、その後に検索データを使って市場性を確認します。検索需要は戦略の起点ではなく、戦略を検証するための手段として捉えます。
第三に、AIを流入チャネルではなく、「ブランド理解装置」として捉えること。
「AIにどう表示させるか」ではなく、「AIは自社ブランドをどのような存在として理解し、どのような文脈で推薦しているのか」を問います。
第四に、「どれだけ露出しているか」ではなく、「どのように理解され、その間にどんなGapがあるか」を見ること。
公式・AI・第三者という異なる視点を比較し、その差異から新しいナラティブの可能性を探ります。
これは新しいマーケティングというより、むしろ原点回帰でもあります。
キーワードやアルゴリズムから施策を考えるのではなく、まず事業課題とユーザーを理解し、ブランドがどのような価値を持つべきかを考える。そのうえで、AIや検索データを手段として活用する。
だから、GEO分析のゴールは「AIに見つけてもらうこと」ではありません。
目指すのはAIそのものを最適化することではなく、AIのブランド理解を形成する「情報環境」をより豊かにしていくことです。

ブランド理解をどうマネジメントするか
Narrative Marketingでは、ブランド理解の現状を分析して終わりではありません。そこから、どのような語りが生まれる環境をつくり、どう評価していくのかまで考える必要があります。
講演では、このプロセスを大きく3つに整理して紹介しました。
第一は、「何を語るか」です。
企業の公式メッセージをそのまま第三者に発信してもらうのではなく、生活者が自らの体験として語りやすい論点を設計します。
商品機能を並べるだけではなく、「誰の、どのような課題に対して、その機能がどんな意味を持つのか」まで落とし込み、推奨理由や体験文脈を整えていきます。
第二は、「誰に語ってもらうか」です。
比較メディア、レビューサイト、SNS、インフルエンサー、実際の利用者など、ブランドについて語る第三者は多様です。
単に露出量を増やすことではなく、生み出したいナラティブに応じて、どのような「語り手」と接点をつくるのかを考えます。
第三は、「どう評価するか」です。
SEOでは、検索順位や流入量など「見つかるか」を測る指標が発達してきました。一方、「語られる競争」では、それだけでは十分ではありません。
どれだけ見られたかだけではなく、誰に向けて、どのような文脈で、どれだけ信頼される形で語られているのかを評価する必要があります。
そこで私たちは、第三者コンテンツにおける「語られ方」を定量的に可視化する独自指標「Narrative Score(ナラティブスコア)」を開発しました(特許出願中)。
検索順位やクリック率では捉えにくい、「誰のどんな課題に向けて、どのような比較・体験・推奨が、どれだけ信頼できる形で語られているか」を複数の観点から評価するものです。
また、講演では、9月7日にティザーページを公開したNarrative Marketing Platform「NAINS(ナイン/Narrative Insight)」についても紹介しました。
NAINSは、「何を語るか」を設計し、第三者による多様な語りを蓄積・活用するための基盤として、構築を進めているものです。
NAINSが目指すのは、生活者の体験や文脈から生まれたナラティブを蓄積し、それを起点に新たな語りや文脈へと広げていく「ナラティブ拡張」の実現を目指します。
そのためのチャネルとして、まずは当社がこれまで培ってきたアフィリエイトとソーシャルコマースを統合します。今後はチャネルだけでなく、ナラティブを形成するためのインプットも順次追加し、より多様な第三者の語りを蓄積・拡張できる基盤へと発展させていく予定です。
Narrative Marketing Platform「NAINS」ティザーページ
https://www.valuecommerce.ne.jp/nains/
AI検索時代に競うのは「検索順位」ではなく「ブランド理解」
AI検索への対応というと、「AIにどう表示されるか」「どう引用されるか」「どうすれば競合より多く言及されるか」といった議論になりがちです。
しかし、AI検索がもたらしているのは、検索インターフェースだけの変化ではありません。AIが第三者情報まで収集・解釈し、一人ひとりの文脈に応じてブランドを理解・推薦するようになることで、ブランドが理解されるメカニズムそのものが変わっています。
だから、AI検索時代に競うのは、検索順位ではありません。
ブランド理解です。
重要なのは、AIのアルゴリズムを攻略することではなく、生活者にとって意味のある体験や第三者の語りが生まれ、それらが情報資産として社会に蓄積されていく環境をつくることです。
ブランドは、企業が伝えるものではなく、社会が理解するものへ。
検索順位を競うのではなく、ブランド理解を育てる。
見られることだけを競うのではなく、語られることを支援する。
そのための設計思想が、私たちが提唱するNarrative Marketingです。
【「Narrative Marketing」をテーマにしたイベント出展情報】
BtoCマーケティングCAMP2026
開催日:2026年9月15日(火)
会場:TODAホール&カンファレンス東京
参加費:無料(事前審査制)
イベント公式サイト:https://eight-event.8card.net/btoc-marketingcamp/
<本件に関するお問い合わせ先>
バリューコマース株式会社 セールスサポート
E-mail: Sales_Promotion@valuecommerce.co.jp
<本件に関する報道関係のお問い合わせ先>
バリューコマース株式会社 広報
お問い合わせフォーム:https://www.valuecommerce.co.jp/contact/press/